目的があって、表現が決まる。

2012/07/09 § Leave a comment

企画ってこうやって作るものなんだな、と
思いださせてくれる話。
UNICORN X 宇宙兄弟で話題の「Feel So Moon」MVを
つくったQantaさんのブログから。

というわけで、佐渡島さんとキューンミュージックさんから頂いたテーマは、簡単にまとめると、
「ユニコーンのMVでありつつも、漫画『宇宙兄弟』のMV」
ということである。
これはなかなか大変だ。普通にMVをつくるのも毎回大変なのに、今回は、漫画の魅力まで伝えなくてはならない。

川村と企画を考え始めた。漫画のビジュアルを使う方向、そうではない方向、いろいろとだべっているうちに、ある漫画のことを思い出した。
「サルでも描けるまんが教室」という漫画だ。この漫画は、文字通りまんが教室の体をとっている。漫画文化の中で培われてきた様々な技法を適当にいじりながら、ぶっ飛んだトーンで紹介していく、まんが教室のようでいて漫画という存在そのものをいじっている漫画だ。
その中で、「サブリミナル漫画」というコーナーがあった。このコーナーでは何を紹介しているのかというと、要するにスクリーントーンの粒や、漫画の枠線のような細かくて見えないところに、エロい絵柄や下品な言葉を細かく忍ばせておくと、呼んでいる人をだんだんエロい気分にすることができる、とかそういう話だ。

そういった、コミック中の細かい仕込みをMVにしたら面白いのではないか、と考えた。幸いにも上記の講談社の佐渡島さんがいる。単行本にちょっとした何かを仕込んだり、同時期に発売される宇宙兄弟MOOKに何かを仕込んだりということは可能なのではないか?
いや、これは、このチーム以外では絶対に実現できないことなのではないか?

「MVを通じて漫画を読ませたい」という目的があるから、
「漫画を最大限つかって仕込みを入れるサブリミナルMV」という表現アイデアが出る。

MVなのに漫画にも興味を持ってもらわないといけない、っていうお題がミソで、
このハードルがなかったらこのMVもできてなかったんだ、と思ったら、
広告という仕事で降りかかってくる無理難題は表現のための肥料なんだ、
とポジティブな気持ちになれるような、でもそういうものばかりでもないような、
まとめると前向きな気持ちになれました。
Qantaさん、ありがとうございます。

関係ないけど、このCMが好きです。

目に見えないクルマ

2012/03/04 § Leave a comment


Invisible Mercedes

Mission: 環境負荷が全くない自動車のプロモーション
Idea: 環境の邪魔をしないとは自然と同化すること→目に見えないクルマ

メルセデスの水素エンジンが、
排出ガス0.0%で自然環境に負荷をかけない
ということをメッセージするアンビエント広告。

目に見えないカラクリは、
クルマの左半分にLEDシートをはり、
右半分にカメラを設置して
リアルタイムに映し出す。
すると左側をみた人たちには、
ガラス越しの風景を見るように、
クルマが透き通って見える(見えない?)というわけ。

なんだ半分かよ!
とツッコミたくなる人もいそうですが、
目に見えないクルマというすぐに人に伝えたくなる
キャッチーなアイデアを実現させたことがすごい。
伝えるべきことが明確だったり、ユニークだと
アイデアもジャンプしやすい。

紹介しているビデオも
よくある広告賞の型にはまったプレゼンムービーに
なっていなくてカッコいい。
さすがメルセデスという作品でした。
The Best or Nothing.
と最後に出てくるのも腑に落ちます。

犬だって試食したい。

2012/03/02 § Leave a comment


Granata Pet – Snack Check

Mission: ドッグフードのターゲットへの認知拡大
Insight: 犬がおいしそうに食べてるものは買ってあげたくなる
Idea: チェックインするとドッグフードの試食ができる

飼い主がチェックインすると、ドッグフードが出てきて、試食できる。
コピーは”Check in! Snack out!”
チェックインを報酬にする手法はクーポンでよくあるけど、
犬にさせたのが新しい。
シェアさせることでペットコミュニティに
早く深く広がることもイメージできるし。うまい!

去年のdoggelgangerもそうだけど、
犬モノは企画が跳ねやすくていいですね。
そういえば、ヤングロータス予選のシルバーも犬だし。

もう企画で困ったら
一案は犬をだそう。

おばあちゃんでも使えるスマホの取り扱い説明書

2012/02/12 § Leave a comment

突然ですが、みなさんはおばあちゃんにスマホの使い方を
1から教えることができますか?

初めてバッテリーを入れるところから、
電話をタップで終了するまで。
僕らがかんたんにできることでも
意外とつまづいてしまうのがおばあちゃん。

だれもがスマホを使う時代にふさわしい
ユニバーサルな取り扱い説明書のデザインが
あったのでご紹介します。

タイトルになっているOut of the Boxは
箱から取り出してすぐ、という意味。
箱から出す前にページをめくりながら
操作を教えてくれるので、
端末を手に取ったときには
ちゃんと使えるようになっているというワケ。

発想も素晴らしいですが、
デザインもLike!

ユニバーサルデザインが叫ばれて久しいですが
扱うプロダクトだけでなく、
使いかたを教えてくれるトリセツも
ユニバーサルが求められる時代ですね。

ゲームには、ルールありき。

2012/02/02 § Leave a comment

ヤングスパイクスと同じタッグで臨んだ
ヤングロータスの国内予選の結果が発表された。
結果は残念ながらファイナリストにも残れず。
ADKの11階で行われた発表会場には
100を超える企画と若手コピーライター、ADでうめく尽くされ、
レッドオーシャンを可視化したような世界が広がっていた。

せっかくなので、選ばれた作品を自分なりにまとめてみる。


Gold
「喫煙によって儲かっているタバコ会社の社長からのむかつくメッセージ」
仮想敵を禁煙者にも、喫煙者にもせず、
喫煙者の気持ちをうまく誘導できそう。


Silver
「喫煙は人間より嗅覚が100倍良い犬へのスモークハラスメント」
ターゲットを犬を飼っている人に限定しているのがアイデア。


Bronze
「禁煙で節約できるお金をカレンダーにして可視化」
アナログなカレンダーを使った点や
スパンを10年など長くみたことが評価。


Bronze
「子供が親の喫煙を見つけたら宝(好きなもの)が手に入る」
禁煙の監視を誰がするのかは僕らも悩んだが、
子どもにさせるのは上手い。

以下は、ファイナリストで個人的に好きだったもの。


「9か月やめると、一生分のタバコをプレゼント」
禁煙のためのインセンティブを一番好きなタバコにする。
ただ9か月やめると体が正常になるのでニコチンはほしくなくなる。
という極めてクレバーで楽しい案。


「スモーカーをいたわろう」
喫煙者は体が弱っているのでハンデキャップを抱えている人、
という発想の転換が面白い。


「タバコを入れるポケットをふさぐ」
シンプルに胸ポケットをふさぐサービス。
これにより禁煙の意思も可視化できる。


「禁煙が嫌いですステッカー」
嫌いという意思表示をすることで、さらに喫煙者の肩身を狭くする。
口に出すのは難しいけど、このステッカーが普通になれば
かなり効果がありそう。

並べてみて感じたのは、
チームが目指していた方向と
審査基準にかなりズレがあったこと。

僕らはできるだけ
「広範囲のターゲットに」
「一過性のキャンペーンでなくずっと使える」
「自然とやめる仕組み」を考えてた。

だから禁煙者が知っている健康被害やお金の情報を
表現的に面白く伝えたり、
ターゲットを極端に絞ることはやめていた。
その分、クリエーティブとしては
あまりにプレーンでインパクトのかけるものになっていた。
100も企画が並んでいると、
切り口がかぶっているものは落とされるし、
目立たないと意味がない。

ただ僕らの目指していた方向でも
「スモーカーをいたわろう」
「禁煙が嫌いですステッカー」
みたいなジャンプにすれば
クリエーティブでかつ、ずっと使えるものは
作れると勉強になった。
でもこの競技では、いずれにせよ、
賞はとれないことも分かった。

なにごとも勝つためには
最初の戦略を間違えると
結果につながらない。

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